11.イエバエにBPAを7世代暴露すると雄性化や羽化時期の遅れが生じる

ビスフェノールA(BPA)をはじめとする内分泌撹乱化学物質は、低濃度で生体内のすべてのホルモンバランスを乱すと考えられています。この様な疑いが顕著に表れたのは野生動物でした。鳥類や爬虫類では、孵化率の低下(卵から雛が生まれない)、雌性化(雌/雄比が高い)、同性ペアリング(雌雄のつがいが減少し、同性のつがいが増える)、海洋生物では、雄性化(ペニスを持った巻貝が増えた)、哺乳動物では、精子数の減少、生殖能力の低下など様々な動物で性ホルモン撹乱現象が観察されています。BPAを典型的な実験動物である線虫に暴露させると、発育、生殖、神経系に悪影響が認められており、これら物質の微量暴露の子孫への影響が危ぶまれています。

BPA暴露による世代への影響を調べるため、イエバエを実験動物に選定して、BPAの添加実験を行いました。イエバエは寿命が短いため、多世代にわたる影響を調べられることが選定の理由です。

環境中で検出されるレベルの低用量BPA(100ng/g)、ならびに高用量(1000ng/g)のBPAを添加した飼育培地に決まった数の卵を植えつけ、卵から幼虫の期間BPAに暴露させ、さなぎの重量と、羽化したハエの雌雄比を調べるというものでした。低用量実験群は、7世代、高用量実験群は、5世代にわたって暴露させました。環境レベルのBPAを7世代暴露させた実験群では、さなぎの重量が増加したのに比べ、高用量実験群のそれは減少しました。羽化した成虫は、雄が雌より多い傾向で、3令幼虫数/卵の数、さなぎの数/幼虫の数は、両実験群で減少しました。両実験群で、羽化までの時間に遅れがみられ、環境レベルのBPAに暴露された幼虫内の幼若ホルモンII,IIIのレベルは、BPAを培地に加えない群(コントロール)に比べ、高い値でした1)。以上の実験結果から、BPAがイエバエの生態に影響を及ぼすことが明らかになりました。

低濃度BPA群の卵を植えつけて4時間後の飼育培地では、添加したBPAの61%が消失し、24時間ですべて消失していました。BPAが卵に取り込まれたのか、培地でBPAにどのような変化が生じたのかはわかりません。メトヘモグロビン(血液中に存在する)などの生体内物質にBPAがくっつきやすく、ラジカル類で壊れやすいことがわかっているので、①卵や培地に含まれる何らかの物質にくっついた、②培地で生じたラジカルにより壊れて、キノン体などに変化した可能性も十分考えられました。

 

引用文献

1)Izumi, N., Yanagibori, R., Shigeno, S., Sajiki,J., Effects of bisphenol A on the development, growth and sex ratio of the housefly MUSCA DOMESTICA. Environ Toxicol Chem. 27: 1343-1353 (2008)