10.環境中に存在するラジカル類で壊された後のBPAの運命は?

生体影響が問題視される化学物質の多くは、環境中で分解されず、自然界に残留するのです。

さて、ラジカル類により壊れたBPAはどのような運命をたどるのでしょうか?壊れて無害な物質に変わるのであれば何ら問題にする必要はないのですが。

その運命が知りたくて、フェントン反応(鉄と過酸化水素でラジカルを発生させる反応)で壊れたBPAの構造を調べました。その結果、ラジカルで壊れたと思われたBPAは、壊れたのではなくBPAが酸化されたキノン体BPAとカテコールアミン体BPAに変化していたのです1)。

一般的に、キノン体の化学物質は、ラジカルの存在下でセミキノンラジカルに変換されるのですが、このラジカルは不安定なため、再びキノンへと変化するようです。この変化の過程で、スーパーオキシドアニオンというラジカルが生じると考えられています。生体内でこの様な反応が生じると、細胞障害が誘発され様々な疾患を引き起こすと考えられています。

海水中では、植物プランクトンの細胞表面に存在する酵素がアミンを酸化して過酸化水素やアルデヒドを発生させるということも知られており、自然の海でのラジカル類の発生源は少なくないものと思われます。

塩素処理された水中で生じたBPAの反応物に女性ホルモン様の作用がみられたという報告もあり、その内分泌撹乱作用が疑われているところです。環境中に酸化されたBPAがどのくらいの量で存在するのか、生体に影響を及ぼさないかについては早急な検討が望まれます。

引用文献

1)Sajiki,J., Yonekubo,J, Leaching of bisphenol A (BPA) to seawater from polycarbonate plastic and its degradation by reactive oxygen species. Chemosphere,  51 (1):55-62 (2003).