7.幼児がプラスチックを舐めるとBPAが唾液中に溶け出す?

印刷インクにもBPAが使われています。BPAを用いないインクの開発も進んでいますが、現状は不明です。私は、日頃、将来の子ども達のからだとこころの健康を願って研究をしていることはすでに述べました。子どもは小さな大人ではありません。赤ちゃんは、生まれてきた時点で外的刺激に対する防御機能が未発達なため、とくに化学物質などに関しては注意を払わなければなりません。脳神経組織も発達段階であり、BPAなど多くの化学物質は脳に備わっているバリアー(血液ー脳関門、血液から脳に有害物質が移行しないように生まれつき備わっている)を容易に通過し、様々な発達障害の引き金になることが懸念されているのです。

幼児の舐めるという行為は、発達の初期段階であり、何でも口に入れる時期があることは、皆さまご存知のことと思います。生まれて初めて手にする絵本の安全性については、注意を払う必要があると思いました。赤ちゃんが絵本を舐めた場合を想定して、絵本からBPAがどのくらい唾液中に溶出されるか調べてみました。もちろん赤ちゃんに絵本を舐めさせて唾液を集めることはできません。本屋から赤ちゃんが初めて出会う、可愛いハードカバーの絵本を10冊購入し、幼児が舐めやすい表紙の一部を切り取り、作成した人口唾液の中に入れ、体温の37度に放置しました。20時間経過すると10冊すべてからBPAが検出されたのです。そのうちの1冊は、おそらくBPAの濃度表示が義務付けられていれば購入しないであろう高い溶出濃度でした1)。すべての本の製造過程でBPAが使用されていたわけです。インクに含まれていたのか、表紙のコーティング剤に含まれていたのかはわかりません。

お父さん、お母さん!赤ちゃんの舐める行為には十分注意を払って欲しいと思います。絵本にはBPA濃度の結構高いものがあります。電車で、静かにさせるために、BPA使用の可能性の高い携帯電話を握らせている親を、たまに見かけます。

おもちゃなど幼児グッズの製造過程では、BPA、ノニルフェノール、フタル酸エステルなど、内分泌撹乱作用が認められている化学物質の使用は極力避けるよう、厳重な監視を要望する次第です。

引用文献

1)佐二木 順子、柳堀 朗子、小林八重子、幼児絵本から人工唾液中へのビスフェノールA(BPA)の溶出実験、日本衛生学雑誌、65: 467~470 (2010)