6.ビスフェノールA(BPA)は、環境中のいたるところに!

BPAは、先進国の水道水以外の殆どすべての水環境中から検出されるといっても過言ではありません(もちろん、地域による差はあるのですが―――)。少量のBPAは水に溶けるため、プラスチックから環境中に溶け出しやすいのです。

なぜ、水道水以外なのか?塩化ビニル製の水道管にBPAが含まれているのに、水道水中のBPAはゼロなのか?実は、この強力なBPA、塩素消毒には弱いのです。塩素消毒で発生するラジカルな分子(活性酸素)類により瞬く間に酸化化合物に変化してしまうのです1)。では、水道水は安全なのか?となると答えはイエスとは言い切れません。BPAの酸化化合物にも女性ホルモン様の作用があるという実験結果もあるからです。現在、水道水の安全性について議論するだけのデータは揃っていないのです。

水道管以外にもパソコンを始めフロッピーディスクなどの関連グッズ、プラスチック食器など、いわゆる落としても割れないものはBPAの添加が疑われています。PC製の強化プラスチックはBPAそのものです。BPAを原材料とするエポキシ樹脂は、缶詰の内面剤、歯科材料にも用いられており、製造過程で溶出してくるBPAの安全性の評価も大切です。

以前、市場の食品の容器からどの程度BPAが溶け出しているか調査したことがあります2)。23種のプラスチックで包装された食品中のBPA濃度は0–14 ng /g、 16種の紙包装の食品中のその濃度は、0–1ng /gと低かったのに比べ、缶入りの48種の食品からは0–842 ng /gと高い濃度を示したのです。缶食品の種類別をみると、魚類0.8-22.6ng /g、肉類4.2-20ng /g、フルーツ・野菜類0-77.7ng /g、スープ・ソース類 0-842ng /gでした。BPAが多量検出された缶詰食品は輸入品が多かったことも新しい知見でした。高濃度の食品が入っていた缶をきれいに洗浄し、水を入れて滅菌すると(121℃に20分間放置)食品中で検出されたのとほぼ同じ濃度のBPAが検出されました。この結果から、缶詰食品のBPAは、滅菌操作の過程で内面剤から溶出した可能性が考えられました。なお、エポキシ樹脂中のBPAは、エポキシ樹脂の製造過程で不純物として含まれるものであり、純度の高いエポキシ樹脂からBPAは溶出しないことも明らかになりました。缶詰食品の安全性を考えるとき、内面剤の品質は重要です。

引用文献

1)Sajiki, J., Decomposition of bisphenol A (BPA) by radical oxygen, Environment International,27:315-320(2001)

2)Sajiki J., Miyamoto F, Fukata H, Mori C, Yonekubo J, Hayakawa K., Bisphenol A (BPA) in foods in Japanese markets and its source. Food additives and Contaminants,24:103-112 (2007)